恋愛結婚という幻想から解放されるとき!男らしさ、女らしさは重要?

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恋愛結婚に見切りをつける。

理由の一つ目は、生理的、科学的な矛盾だ。「恋愛は3年で終わる」というフィッシャー氏の説を紹介したが、正確に言うと恋愛には、次なる第2ステージがある。それを支えるのが、「幸せホルモン」「癒しホルモン」などと呼ばれる、セロトニンやβ(ベータ)エンドルフィン。

恋愛の第1ステージでは、脳内で快楽を司るドーパミンが放出され、「この人とキスすれば、幸せになれそう」などの期待感からドキドキ、盲目な恋愛、子作り(セックス)へと向かわせる。

男女ともに異性を惹き付ける必要もあるから、それぞれの体内では男性・女性ホルモンも活発に作られる。

だが、第2ステージで放出されるセロトニンやβエンドルフィンは、癒し系の物質。恋愛初期のトキメキを抑え、落ち着いた生活や子育てに向かわせるホルモンだ。さらにこのステージでは、男性の体内で男性ホルモン「テストステロン」が大きく減ってしまう。

アメリカ・シラキュース大学の社会学博士、アラン・メーザー氏の研究( 98 年)によると、男性は安定した恋愛や結婚の状態におかれると、早い段階から「父親になる準備」を始めるという。

テストステロンが減る反面、男性でも分泌されやすいのが、プロラクチン。母乳を生成したり母性本能を引き起こす、とされるホルモンだ。

よく男性は、結婚数年後から太り始め、「幸せ太り」とも言われるが、あれは科学者の間では、「生理的に代謝やテストステロンが減ることで、ゴツゴツしたセクシーな男らしさが失われ、太りやすくなるため」だとされている。

結婚生活で夫は男らしさを失う

つまり、恋愛初期に女性がいくら「男らしい男性」を求めて結婚しても、幸せな結婚生活や出産によって、夫は男らしさを失う。正確には、その後テストステロン値が復活する時期もあるのだが、いずれにせよ、生活や子育てに必要なのは、生理的、科学的に見て「男らしさ」より母性。トキメキより癒し。

だからこそ、男性の体内で母性を司るプロラクチンが生成されたり、男女共に癒し系のセロトニンが放出されるのだ。

矛盾の もう一つは、現代特有の共働きとイクメン志向。 厚生労働省の調査(13年)によると、出産後も働く女性の割合は年々増加、いまや子どもが10歳になる頃には、7割以上の母親が何らかの仕事を持って働く時代だ。

中大教授の山田氏は、「近い将来、この割合は9割に達するだろう」とみる。社会全体の労働力不足や女性の社会進出、男性側の年収の伸び悩みがおもな原因だ。

また先のとおり、若い世代では独身男性も9割以上が「未来の妻にも働いてほしい」と希望、結婚後の妻に「稼ぎ力」や「男子力」を求める男性も増えている。

一方の女性はどうか。やはり未来の夫には、稼ぎを求めるだけではない。国の第三者機関の調査でも、「結婚相手(未来の夫)の『家事力』を重視する」と答えた女性(未婚18~34歳)は、なんと62%。さらに驚くことに、これは、「経済力を重視」の回答より、2割も多い(11 年/国立社会保障・人口問題研究所)。

女性は女性で、結婚後の夫に「女子力」を強く求めているわけだ。当然ながら、恋愛初期に不可欠なのは、性衝動にもつながる「男らしさ」「女らしさ」。だが結婚後の生活を考えれば、そこは必ずしも重要とは言えない。

近年はさらに夫にも女子力が、妻にも男子力が必要とされてもいるのだ。これらを鑑みても、 恋愛と結婚は元来、相容れないどころか、相反する もの。極端に言えば、「混ぜるなキケン」なのである。

そろそろ恋愛結婚という幻想から解放されるとき

マーケティングでよく用いる行動心理学用語に、「認知的不協和」がある。たとえば、夜中にどこからかカレーの香りが漂ってきて、急に「カレーが食べたい」と感じたとき。

多くの人は、まず旧来型のカレーライスをイメージするだろう。でももう夜中だし、白いご飯を食べると太りそう。そこまでの食欲もない……。 そんなとき、人はどうするか。「カレーライスが食べたい」「でも白いご飯は要らない」、この二者間に横たわる矛盾(不協和)を認知し、どちらか一方を修正しようとする。

認知的不協和を無理にでも解消しないと、自分の欲求を否定するしかないし、不協和状態は落ち着かない(一貫性の法則)からだ。

このとき、「白いご飯は要らない」を修正したくなければ、人はもう一方に目を向ける。「そうか、私は『カレーライスが食べたい』わけじゃない、『カレーが食べたい』だけ。ならば別に、ご飯抜きのスープカレーやカレーパンでもいいんだ」といった具合。

結婚にも同じことが言えるはずだ。若者の多くは「結婚したい」と答えるとき、いまだに80 年代モデルの「恋愛結婚」をイメージするだろう。当時のアメリカ映画やトレンディドラマによく見られた、情熱的な恋愛から結婚へと向かうイメージ。

「現実に、そこまでの大恋愛はないな」と思っても、恋愛抜きの結婚は発想にないから、「恋愛しなきゃ、どうせ結婚できないんだ」と落ち込む。

つまり、「(恋愛)結婚したい」「でも恋愛は面倒」。この不協和を認知しながらも、どちらかを修正しようとしなければ、単にイライラしたり滅入るだけ。落ち着かないはずだ。

でもそれは、単に結婚におけるスープカレーやカレーパンの存在を知らないから。実際には白いご飯抜きの多彩なカレーメニューがあるように、結婚にも多様な形がある。

そう、恋愛と結婚をいったん切り離し、多様な結婚に目を向けられれば、彼らはずっとラクになれる。「そうか、私は『恋愛結婚』がしたいわけじゃない、『結婚』がしたいだけ」だと気づけば、彼らの9割が望む結婚にも、いまよりもっと自然に近づけるはずだ。

「結婚に恋愛は必要か?」の問いに、「必要ない」と言い切ったのは既述の3%のみだが、「必ずしも必要ない」と答えた男女を合わせると、独身で14%、有配偶で21%と決して少なくない。

その理由として、「恋愛感情と結婚生活は、別だから」(20代男性・有配偶) 「恋愛しなくても、相手を大切に思うことはできる」(20代女性・独身)「恋愛時と結婚時の乖離が、離婚の原因になると思うから」(20代男性・独身) といった声もあがった。

かつて、フランスの哲学者、モンテーニュは言った。「美貌や愛欲によって結ばれた結婚ほど、早く紛争を起こして失敗するものはない」と。

また、「夫をつかまえるのは技、とどめておくのは努力」や、「結婚とは、男女個人の幸せを確保することが目的ではない」などの名言で知られるフランスの作家、ボーヴォワールは、哲学者サルトルと生涯を共にするにあたり、あえて入籍はせず「契約結婚」という特殊な形を選んだ。

それはたぶん、「恋愛と結婚は別」だと痛感していたからだろう。生理的にも、そして近代社会的にも、「混ぜるなキケン」の、恋愛と結婚。

実は一部の男女は、古き80年代モデルの恋愛結婚に見切りをつけ、すでにドライで多様な男女の結びつき、「連帯結婚」や合理的で何かとお得な「コスパ婚」へと向かい始めている。

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