恋の願いをかなえる要求を受け入れさせる心理的な駆け引き

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
恋する願い。

結婚したばかりの友人に新婚生活についてたずねたとします。友人の答え方には二通りあります。「お金はないけれども、幸せよ」「幸せだけれども、お金がないの」。

この答えを聞いて、どのような印象をもつでしょうか。たいていの場合、前者には「よかったね」という気分になり、後者には「こまったね」という気分になるのではないでしょうか。

内容は同じでも、受け取る側の印象は、これほど違うのです。 初めにマイナス面を伝え、後にプラス面を伝えるほうが、印象はいいのです。

さて、これは愛の告白にも通じるものです。一般的には、相手のプラス面を強調しながら、自分の思いを告げる人が多いでしょう。

人は自分を認めてくれる人には好意をもち、自尊心を傷つける人には好意がもてないものですから

最初にけなして後で誉める

相手を誉める方法自体は、けっして悪くはありません。しかし、より効果的な告白は、「最初にけなしてから誉める」 方法なのです。

こんな実験があります。被験者(Aさん)は、同じ被験者だと信じている人(実はサクラ)が実験者に向かって、Aさんについての評価を報告している会話を耳にします。

Aさんとサクラは七回話し合いますが、その都度、サクラは実験者にAさんの評価を報告します。Aさんは合計七回、自分についての評価を偶然 聞かされるわけです。

さて、Aさんはサクラにどの程度の好意をもつのでしょうか。第一被験者グループは、サクラから、最初から最後までプラスの評価ばかり受けます。

第二のグループは、最初から最後までマイナスの評価ばかり受けます。

第三のグループは、最初はマイナスの評価で四回目から徐々にプラスの評価が増え、最終回では完全にプラスの評価を受けます。

第四のグループは、初めはプラスの評価、四回目からマイナスの評価が増えはじめ、最終回では完全にマイナスの評価を受けます。

サクラの批評を七回、 偶然 聞かされた後で、各被験者がサクラにどの程度の好意をもったかというのがこの実験です。結果は下の図で表示しています。

噂話をしている人に対す好意度

グラフによると、 終始プラスの評価を与えてくれた人より、マイナスからプラスへと評価を変えた人に好意をもっている のがわかります。

また、終始マイナス評価をした人よりも、プラスからマイナスに評価を変えた人をより嫌っています。

一貫して誉めてくれた人に対しては、自分を誉めすぎていると感じたのでしょう。それよりむしろ、初めにけなされた場合のほうが、最後の評価が実際以上にプラスに感じられたのです。

最初はけなされたけれども、最終的には評価を得た場合に、被験者はいちばん自尊心を高めています。それが、好意になって表れているのです。

直接告白と間接告白

ところでこの実験は、もともと「噂話の功罪」がテーマです。被験者のAさんが偶然、耳にした話をもとに、サクラへの好意を測るのが実験の趣旨なのです。

ですから、この実験結果を告白の方法に応用するとしたら、「直接告白」より「間接告白」のほうが、より効果的 だということになります。

直接告白は、相手に面と向かって好意を示す、一般的な方法です。それに対し、間接告白は、第三者に相手への好意を伝えてもらう方法です。

いわば、「噂」として、相手に告白するのです。さて、間接告白の場合、この実験結果が大いに参考になるはずです。つまり、最初にマイナス評価の噂を流し、徐々にプラス評価の噂を流し、最後は最上のプラス評価を伝えるのです。

「あの人、私の趣味じゃないわ」と言っていたと、第三者に噂を伝えてもらったあと、徐々に評価を上げた噂を流していきます。

そして最後は、「リーダーシップもあり、優しくて、とても魅力的な男性……」と言っていたと、第三者に伝えてもらう──これがベストの手順です。

ただし、手順や伝わり方を一歩間違えれば、苦労も水の泡になってしまいますから、要注意です。

最初は「小さなお願い」をして親しくなる

非常に面倒な調査を人に頼む場合、どのような方法がいちばん説得しやすいか、というテーマの実験で、三種類の説得方法が想定されました。

A=いきなり訪問して調査を依頼する
B=「調査にうかがいますので、その節はヨロシク」と連絡してから調査を依頼する
C=あらかじめごく簡単なアンケート調査に答えてもらってから面倒な調査の依頼をする

さて、どの方法が、いちばん承諾率が高かったでしょうか。結果は、Cの方法がベストでした。この方法では、53パーセントの人が調査の依頼を承諾したのです。

ちなみにAとBの方法では、承諾した人はそれぞれ20パーセント台でした。 Cの方法は、 最初に相手が承諾しやすい小さなお願いをしておいてから、面倒な依頼をする、いわば、段階的に要求水準を上げていく手順です。

「話だけでも聞いてください」と、小さな要求で切り出すセールスマンがいます。「話だけなら……」と応じて、玄関のドアを少し開けると、セールスマンは足を差し込み、もうドアを閉めさせません。

結局、玄関の中にセールスマンを入れ、話だけは聞くハメになります。しかし、もちろん「話だけで終わる」はずはありません。セールスマンは徐々に本題に入っていきます。

まず、小さな要求を承諾させ、最後は本来の要求を承諾させる。これは「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」 と呼ばれる方法です。これがつまり、「足入れの心理効果」です。

詐欺師もこの方法をよく用います。「明日までに3万円が必要だ」3万円でうまくいくなら……と、サイフのヒモを緩めると、以後、要求額はどんどんふくらんでいきます。

そして最後は数百万円を要求されても、なぜか応じてしまうのです。要求されるたびに、心の許容範囲は広くなっていきます。 初めは小さくても、徐々に大きくなっていく。

このように、面倒なことを頼むときには、最初はささやかな要求をして、お近づきになるのが原則です。

「ちょっとでいいんだけど、時間、空けてくれませんか」いくら忙しくても、30分も時間をとれない人は少ないはずです。その日は駄目でも、何日か後に応じることはできるでしょう。

「ちょっと、テニスを教えてください」もちろん、相手がテニスが得意だったらの話です。  どちらにせよ、ささやかなお願いです。

このような「ちょっと感覚」なら、日常生活の中で意外にすんなりと受け入れられることは、体験的に理解できるでしょう。

ちょっとくらいなら……と、相手は要求を受け入れる。つまり、ドアの内側に足を入れさせた状態です。相手は、一度、要求を受け入れたのですから、次に、もう少し大きな要求を受け入れやすい状態になっています。

そこで、二度目の要求をするのです。これで相手は、玄関の中に入ることも承諾してくれた状態です。

そして三度目の要求で、靴を脱ぎ……となるかどうかは、要求の仕方しだいでしょう。いきなり、たとえば「結婚してください」と大きな要求をしたとしても、その場で承諾される可能性は非常に低いはずです。

まず、小さな要求で、「イエス」と言わせることが、大きな要求にも「イエス」と言わせるきっかけになるのです。

「大きなお願い」の後の「本当のお願い」が効く

前でご説明した「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」とは、まったく逆の方法があります。 「50万円貸してください」といきなり要求しても、相手はほとんどの場合、拒否します。

「では、せめて2万円。2万円でいいのです」と再要求してみましょう。すると……。

これは、 最初の大きな要求を拒否させておいて、次の小さな要求には応じさせる方法です。 「フェイス・イン・ザ・ドア・テクニック」 と呼ばれる方法で、つまり「顔見せの心理効果」です。

「転勤するのが無理なら、せめて社内の異動には応じてくれ」などといった形で、ちょっとズルイけれども、職場ではよく使われる手順です。

いきなり「社内異動」を要求しても拒否されることを見越して、最初は「転勤」を要求し、計算どおり拒否されたら、「せめて社内異動には応じてくれ」と、相手に譲歩を促すのです。

要求を小さくされた形ですが、もともとの狙いが「社内異動」ですから、100パーセントの要求達成になるわけです。

この「顔見せの心理効果」が相手の心を動かし、最後は承諾させてしまう理由は、次のように説明されています。

◆最初、大きな要求を断られた説得者が次の小さな要求をすることが、説得者側の譲歩と受け取られ、そのお返しとして、小さな第二の要求に応じやすい。

◆断るだけでは説得者に悪い印象を与えてしまうので、小さな要求を受け入れることで、少しでも良い印象を与えようとする。

◆最初の要求を断ることによって生じた罪の意識を、第二の要求を受け入れることで償おうとする。

たとえばあなたが、「以前から憧れていたのです。交際してください」と、いきなり要求したとします。

彼が「イエス」と応えれば申し分ないことですが、「ノー」と拒否されたとき、 「顔見せ法」では、ここで第二の要求をするのです。

「交際してもらえないなら、せめて、ときどきでいいので、暇なときに喫茶店で話し相手になってください」

第一の要求は相手にとっても困ることかもしれませんが、それに比べれば第二の要求は、ささいな要求と受け取るはずです。

ときどきお茶を飲むぐらいなら……と、受け入れてくれる可能性はずっと高くなります。  要求者にとっては、第一の要求は拒否されたわけですから、「失恋」ではありますが、もともと、第二の要求がかなうだけでも嬉しい、と思っていたのです。

それに、この要求が受け入れられれば、以後、新たなチャンスをひろげることもできます。  今、「フェイス・イン・ザ・ドア・テクニック」が奏功し、相手は小さな要求を受け入れた、つまりドアに足を入れた状態なのです。

フット・イン・ザ・ドア・テクニック

後の展開は、「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」を駆使すればいいのです。少しずつ要求を大きくし、相手の心の許容量を広げていく方法を活用してみましょう。

ここでもうひとつ、女性にとっては心強い実験の結果をご紹介しましょう。女性の側からの依頼に対する承諾率の高さを示すデータです。

ニューヨーク市と田舎の町で、「道に迷っているので電話を貸してください」と戸別訪問する実験がおこなわれました。

ニューヨーク市では、訪問者が男性の場合は、12パーセント、女性の場合は40パーセントの家のドアが開かれ、田舎町では訪問者が男性の場合は40パーセント、女性の場合は100パーセントの家のドアが開かれたそうです。

女性の要求は、男性の要求よりも、承諾される率がずっと高いのです。あなたが女性なら、要求は意外にすんなりと受け入れられる可能性も高いのです。

その場合、 少し開いたドアから「足を入れる」か「顔を見せる」かは、状況に応じて自分で判断しなければなりません。

たとえば、彼があなたに強い関心をもっている場合には、いきなり「無理な要求」をしてもだいじょうぶです。なぜなら、彼は「できるだけのことをしてやりたい」と思っているので、かなり面倒なことでもOKしてくれるはずだからです。

しかし、彼にあまり気がないときには、とにかく、まずは彼の関心を引きつけなくてはいけませんので、すぐOKしてくれそうな小さな要求から始めるべきでしょう。

おいしい話でその気にさせる

偽りの好条件を提出して相手を自分に引きつける方法があります。これが「ローボール・テクニック」 といわれるものです。「ローボール」とは、野球の「つり球」です。

たとえば、「この仕事は100万円の報酬だ」と条件提示をし、途中で「実は70万円です」と、本当の条件を伝えるのです。

当然、相手は「約束が違う!」と怒ります。しかし、「じゃあ、この仕事はやめた!」となるケースは意外に少ないものです。

仕事も途中まで進行していますから、簡単にやめるわけにはいきません。不満は残るけれども、最終的にはOKせざるを得なくなる、というわけです。ズルイやり方ですね。

「仲人口」という言葉があります。これもまさに「ローボール・テクニック」です。男性側にも女性側にも、いいことばかりの「つり球」を投げ、一度、結婚を決意させるやり方です。

当人同士が結婚の確認をした後で、「実は……」と、今まで隠していた両者の本当の姿を伝えるわけです。

「話が違うじゃないか!」と、両者が怒るのは当然です。しかし、一度、合意した「結婚」という方針に向けて、事態は進み始めています。

それを御破算にするのも、なかなか決心がつかないものなのです。「条件は変わったけれども、この際、仕方がないかなぁ……」と、しぶしぶ受け入れるようなケースも多いのではないでしょうか。

これは、要するに〝毛針〟のようなものです。ニセモノの 餌 で大魚を釣る、ということです。

まったく料理のできない女性が、彼の前では料理上手をセールスポイントにしたとします。交際を経て、彼は結婚を決意します。

そうして、その後で「実は料理は苦手」だと告白しても、彼はおそらく婚約を解消しようとは考えないでしょう。一度、〝その気〟になったからです。

この「毛針効果」の弱点は、最後に〝本当の姿〟を伝えなければならないことです。詰めを誤れば、それまでの手順が水泡に帰す可能性ももちろんあります。弁解の仕方も考えなければなりません。

最後の弁解に自信のない人は、むしろ、初めからこの心理効果は使わないほうが賢明かもしれません。相当のベテランならともかく。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

SNSでもご購読できます。