幼馴染みとの結婚の理想と現実

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
地元田舎に戻って結婚をする。

現 20 代男女の「超親ラブ」ぶりと関連するだろう。おもに、結婚しても親元の近くに住みたい、地元に戻りたいとする傾向だ。

マーケティングの世界では、 現アラフォー年齢ぐらいから下の世代の男女に、「圧倒的に地元志向が強い」との見方がある(サントリー次世代研究所ほか)。現 20 代も親ラブなだけでなく「地元大好き」な世代でもあるわけだ。

昨今、若者の間で「ゆるキャラ」「B級グルメ」や「ご当地アイドル」など、地元応援型のプロモーションが人気なのも、ひとえに彼らの地元愛ゆえと言われている。なぜそうなったかは諸説諸々ある。

テレビ等でもお馴染みの評論家・山田五郎氏は以前、「転機はやはり、バブル崩壊後」だと話している。彼がそう感じたきっかけは、99年、『ホットドッグ・プレス』(講談社/ 2004 年12月に休刊)の編集長時代に、おもに当時の女子大生(現アラフォー年齢)に、「デートでどこに行きたいか」を調査したとき。

1位の回答こそディズニーランドだったが、2位、3位には地元を含む「回転寿司」や「焼肉食べ放題」の店がランクイン。バブル期は歓迎されなかった「おうちデート」も、多数派となっていた。

しかも、若者が渋谷などの繁華街に出なくなり、「地元のイオン」でショッピングするシーンも目立つようになった、とのこと。 90年代後半には、郊外型のショッピングセンター等が全国に増え、わざわざ都会で買い物する必要がなくなった。それとともに、 都会への憧れも薄れていったのだ。

また、不況で親が子を都会の大学に下宿させる余裕がなくなり、地元への進学が増えたせいもあろう。ただ一番大きいのは、やはり「国も会社も守ってくれない」時代のなかで、既述のように「 親や地元の友達(ジモ友)だけは自分を裏切らない」といった、親ラブ志向や地元への傾倒が強くなったことだと思う。

ジモ(ト)婚、同級生婚

当然、結婚も「地元で」と考える若者が数多い。宮コン(宇都宮)や前コン(前橋)など複数の「街コン」では、東京や名古屋、大阪からも「できれば地元に戻って結婚したい」と地元出身の若者が詰めかけ、現地のビジネスホテル等が満員になる様子が見てとれた。

「名古屋のよさが分かる女性でなきゃ、価値観が合わない気がする」や「地元の町田が大好きだから、町田に住んでくれる条件で(結婚相手を)探したい」など、都市部出身の若者から「ジモ(ト)婚」を支持する声が多数あがっている。

「もし僕の田舎で一緒に暮らしてくれる女性がいれば、その人を選ぶ」や 「やっぱり地元が一番落ち着くから、同級生と結婚して地元に戻りたい」など、Uターン結婚を希望する地方出身の若者も、決して少なくない。

最近は、お盆やお正月など帰省時に婚活する「帰省婚活」 も話題を呼んでいる。また、最後の声にあった元同級生との結婚、いわゆる「同級生婚」 も、昨今のブーム。

サッカー日本代表の内田篤人選手や武藤嘉紀選手が、相次いで元同級生と結婚したせいもあるが、なんといってもSNSの存在が大きい。気心知れた懐かしい異性と、いつでも簡単に再会できる。同窓会も実施しやすいだろう。

しかも、フェイスブックなど一部のSNSでは「既婚・未婚」が表示されるから、相手の近況がひと目で分かる。岐阜のスーパーで社員として働くA子( 28 歳)も、同級生婚の1人。 2年前、同窓会で再会した夫は、中学時代に2か月だけ交際した相手。再会当時、彼は大阪に住み、フリーで音楽活動もしていたが、収入はコンビニでのバイト代だけだった。

それでもA子が結婚を決めたのは、祖母が大腸ガンにかかったから。そして彼が、「地元の岐阜に戻って結婚してもいい」と言ったからだ。 昔から、大のおばあちゃん子。3年前、祖父母宅と同じ敷地にあった岐阜の実家を建て替えた。その際、A子が未来の夫と暮らせる部屋をイメージして、三世帯住宅に。

準備万端、祖母を挙式にも呼びたかったから、「恋愛より結婚」を優先した。 初めは「もっとゆっくり相手を探しても」と反対した父親も、説得に時間はかからなかったという。

元同級生で、彼の誠実な人柄を知っていたから。いまは夫が婿入りし、実家の米屋を手伝っている。A子は結婚後、冷え性改善(妊活)のためヨガ教室に通う毎日。「祖母に早くひ孫の顔を見せたい」と、笑顔を見せる。

「ジモ(ト)婚」のメリットとしてよくあがるのは、次のような声だ。

1 結婚後も、近くに親や祖父母、地元の友達がいて安心
2 慣れ親しんだ地元の風土に囲まれ、生活や子育てできる
3 地方がジモトなら、都心より家賃や生活費を抑えられ、コスパがよくてお得

何事にもストレスフリーを求める若者にとって、地元で信頼できる人たちに囲まれて暮らすのは、安心感が高い。だが、それだけが地元を好む理由でないことは、A子の様子を見れば分かるだろう。

生まれたときからずっと不況続き、雇用も安定しない現20代にとって、「ジモ(ト)婚」は、「3」、すなわち経済的メリットも大きいのだ。

実は仕事選びでも、結婚と似た傾向が出ている。全国の就活生に聞いたある調査で、Uターン就職を含む地元での就職を「(どちらかというと)希望する」男女は、なんと7割弱。

理由のトップは「両親や祖父母の近くで生活したいから」(46%)、2位は「自宅から通えて、経済的に楽だから」(40%)だった(2015 年/マイナビ)。

あえて田舎に引っ越して結婚する

移住婚、里山婚

13 年に発売され、たちまちベストセラーになった、地域エコノミスト・藻谷浩介氏の著書『里山資本主義』(角川oneテーマ 21)。

ある報道番組で藻谷氏が言っていたこと、それは「都会であくせくサラリーマン生活を送る人より、里山暮らしの人たちのほうが、お金はないながらもはるかに豊かな生活を送っている」ということ。

彼が「お金に換算できない、里山の資本」と呼ぶのは、新鮮な野菜や魚、おいしい水、そして火を囲む楽しい集いなどだ。 コミュニティデザイナーの山崎亮氏も長年、地域の課題を地元住民が解決するワークショップなどに多数関わってきた。「エコやリノベーション、フェアトレードなどを好む現 20 代男女の嗜好は、田舎暮らしとリンクしやすい」と話す。

事実、最近は都心出身の若者が、あえて結婚生活の場を「地方」に求める動きも目立っている。地方が若い人口を増やそうと、婚活支援や移住の住宅費補助などを提案するせいもあろうが、単純に田舎の自然や生活に憧れ「都会を出たい」とする若者も多い。

旅行代理店勤務のM子もその1人。里山生活に憧れている。「子育てするなら田舎が一番」だと昨年、北海道・某市が開催した婚活イベントに参加。あいにくいい出会いはなかったが、「次は、群馬あたりを狙ってます」と話す。

一方、逆転婚を果たした先のフリーター・Tは、「もし彼女(妻)が出産とかで仕事を辞めたら、家族で田舎に住むのもアリかな」と、ぽつり。生活費が抑えられるのもあるが、いまトライするゲームディレクターの仕事は、自分には合わないと薄々気づいている。移住すればふんぎりもつく、転職にも踏み切れるだろう。

ただ、先の山崎氏は「地方で暮らすなら、転職など『雇われる』という考え方はやめたほうがいい」と苦言を呈する。田舎暮らしには何らかの「手に職」を身に付けた、プロダクティブな男女が向く、とも言う。

大業なことでなくていい。たとえば、野菜を作れたりヘアカットができるなど、地元の人たちの生活を手助けできる技術。そうすれば、川で釣った魚や、地元のおばあが漬けた漬物など、日々の食材を「物々交換」で貰える可能性もある。家賃はもちろん生活費も含めて、一般には都心よりはるかに安く生きられるはずだ。

反面、地方には十分な雇用があるとは限らない。起業までいかずとも、「地元の人たちと力を合わせて、こんなことがしたい」と自発的に取り組む気持ちが大事だ、と山崎氏。

若者を呼びたい地方の行政も、「豊かな自然があり、安心して子育てできて」など通り一遍ではなく、自分たちが当たり前と思っている日々の生活の風景、あるいは若者たちの暮らしを、サイトやSNSも含めてもっとリアルに伝えていくべきだ、とも言う。

たとえば、北海道西部に位置する、黒松内 町。ブナ北限の地として知られるが、15年現在、人口は3000人程度と減少著しい。この町の魅力発信の形を問われた山崎氏は、「自然も悪くはないが、『車庫焼き』のような地元の文化を前面に出したほうがいい」と提案した。 車庫焼きとは、住民たちがクルマを車庫から出してバーベキューを楽しむイベント。秋冬は寒い地域だから、吹きさらしの屋外では長い時間集えない。そこで地元住民が、車庫を利用して野菜や肉を焼き、「おいでよ」と仲間を誘う行事へと発展したという。

でもなぜ、山崎氏はあえてこのイベントを推したのか。それは、地方で婚活を行なっても、「恥ずかしい」「噂になりたくない」と、出席する若者が少ないからだ。 対する車庫焼きなら、「美味しい野菜があるよ」と、他地域の異性も誘いやすい。

あからさまな恋愛や結婚目的ではなく、「まずは楽しく話をしよう」と呼び込むことで、自然な出会いが生まれる。町が持つコミュニティの価値にも、気軽にふれてもらえるだろう。

「里山婚」を含む移住に求められるのは、リアルな生活やコミュニティ実感。メリットとしてあがるのは、次のような声だ。

1 豊かな自然のもとで、スローライフを実現できる
2 自給自足に近い生活を送ることで、家賃や生活費を抑えられる
3 地域の人々との「ゆるつながり(ゆるいつながり)」を実感できる

一方で、田舎暮らしでは難しい点もある。14年、NHK総合『おはよう日本』が特集で取り上げたのは、いったん移住した男女の「地方離れ」。高知に移住した5人に1人が、4年間で高知を離れ、地元等に戻っていたという。

理由の一つは、「プライバシーのなさ」だ。それでも、田舎暮らしや里山婚に憧れる20代は、決して少なくない。内閣府の調査(2014年)でも、都市に住む男女のうち「農山漁村地域に、定住したい願望がある」と答えた人は、32%。最も多かったのは20代で、約4割を占めた。

里山婚を夢見ても、現地に仕事があるとは限らない。それでも、山崎氏は「前向きな地方移住」を否定しない。理由の一つは、近年、倒産企業の平均寿命が23.5年しかないこと(2015 年/東京商工リサーチ)。

都心の企業に就職しても、現20代が40代半ば~後半になるまでに、多くの企業が潰れてしまうからだ。彼は言う。

いまや労働者のうち、9割弱がサラリーマン。でも戦前までは、8割が個人事業主だった。田舎でやりたいことがあるなら移住する道もあるんだと、若者に知ってもらいたい。多様な生き方を知ってほしいのです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

SNSでもご購読できます。